チリモン図鑑第3巻 エビカニ(節足動物)編

 チリメンモンスターのうちエビカニ(節足動物)の仲間を紹介します。
(写真内のスケールは特に表記しない限り、1目盛り5mm。出現頻度は☆が多いほど珍しい。最大☆5つ:但し館での記録による判断。)
なお、学名や種の特徴については主に保育社刊「原色検索 日本海岸動物図鑑2」東海大学出版会刊「日本産海洋プランクトン検索図説」を参考にした。

     
 [軟甲類 十脚目 短尾下目(カニの仲間)]
[ヨツハモガニ]
学名:[Pugetta quadridens ]
採集データ:平成22年7,8月の和歌山・大阪湾産チリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:ヨツハモガニは北海道から九州までの波打ち際から浅海の岩場に生息するクモガニの仲間。
[イッカククモガニ?]
学名:[Pyromaia tuberculata?]
採集データ:平成22年7,8月の大阪湾・和歌山産チリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:イッカククモガニは日本では1970年に初めて採集された、移入種とされているカニ。元来、北アメリカ太平洋岸に分布していたが現在では、大阪湾や瀬戸内海でも記録されている。有機物に富む内湾の砂泥底を好む。クモガニの仲間。
[軟甲類 十脚目 クルマエビ下目]
[キシユメエビ]
学名:[Lucifer hanseni ]
採集データ:平成19年10月大阪湾産のチリメン(のよりかす)より採集。
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
解説:ユメエビは西日本の湾内で稚魚ネットやプランクトンネット等で採集される浮遊性のエビ類でサクラエビに近縁。
秋期に爆発的に発生する。
ちなみにこの種の属名Lucifer(ルシファー)は堕天使あるいは魔王の意味。
[アキアミ]
学名:[Acetes japonicus ]
採集データ:平成18年9月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
解説:アキアミは西日本の沿岸各地に多く生息し、近縁のサクラエビと同様に食用とされる。(アミの塩辛の原料。)
 [軟甲類 十脚目 コエビ下目]
[ヒラツノモエビ]
学名:[Latreutes planirostris ]
採集データ:平成19年10月和歌山県産のチリメンより(「大阪ほんわかテレビ」の取材時,レポーター武内由紀子氏が採集。)
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
解説:ヒラツノモエビは函館以南、九州までの内湾のアマモ場に生息するモエビの一種。
雄雌で角の形状が違うらしい。(いこまるさんの「生駒自然図譜」を参照しました。)
   
[ソコシラエビ]
学名:[Leptochela (Leptochela) gracilis ]
採集データ:平成19年8月和歌山県産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:ソコシラエビは、遊泳棲のコエビの一種で日本近海では普通種。タイ・スズキなど大型魚類の主要な餌動物であるそうだ。
   
 [軟甲類 十脚目 イセエビ下目(イセエビの仲間)]
[(セミエビの)フィロゾーマ幼生]
学名:[----]
採集データ:平成20年10月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:ウチワエビやセミエビの属するイセエビ族のエビ類はこの幼生期を経る。紙で作った人形のようだ。
[プエルルス幼生]
学名:[----]
採集データ:平成18年9月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
解説:上記のフィロゾーマ幼生が変態し成体と同じ形態になったもの。
生きているときは透き通っており漁業関係者は「ガラスエビ」と呼んでいるそうだ。
 [軟甲類 十脚目 その他のエビの仲間]
[エビのゾエア]
学名:[----]
採集データ:18年9月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
解説:カニ類のゾエアは珍しくないが、エビのゾエアについては初記録。
 [軟甲類 十脚目 短尾下目(カニの仲間)]
[アサヒガニ類?のメガロパ幼生]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
採集データ:平成19年8月有田湯浅産のチリメンより(当館来館者が採集。)
解説:比較的大型のメガロパ幼生で一見すると4対の脚しかないように見える。
付属肢の形状からするとアサヒガニ類のメガロパ幼生かもしれない。
[イシガニ類?のメガロパ]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
採集データ:平成20年5月の有田湯浅産のチリメンより採集(橿原市昆虫館むし祭りにて参加者が採集。)
[ガザミ]→[ヒメガザミ]
学名:[Portunus ( Portunus ) trituberculatusPortunus hastatoides]
採集データ:平成21年8月の大阪湾産(和歌山沖・神戸沖混在)チリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:ガザミと同定していたが、専門家の指摘により訂正。ヒメガザミは東京湾以南の水深30〜80mあたりの海底にすむ小形のガザミ類。
[イシガニ類(イシガニ?)]
学名:[Charybdis(Charybdis) japonica ?]
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
採集データ:平成18年11月の大阪湾産のチリメンより採集。
解説:この仲間のカニの第5歩脚はひれ状になっており遊泳ができる。
食用にするワタリガニ(ガザミ)はこの仲間。
[ヘイケガニ類のゾエア幼生]
学名:[----]
出現頻度:☆(非常に多い)
解説:漁業関係者は「プロペラ」とか「ヘリコプター」と呼んでるそうだ。
[カニ類のメガロパ幼生(その1)]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
解説:カニ類の成体のひとつ前の段階の幼生。
成体では「ふんどし」になっている部分が尾として機能する。
カニ類のメガロパ幼生(その2)]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
解説:上記のものとは異なる種のメガロパ。
背中にコブ状の装飾がある。
[カニ類のメガロパ幼生(その3)]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
解説:比較的大型のメガロパ幼生。
春先の波打ち際に大量発生するショウジンガニのメガロパ幼生かもしれない。
 [軟甲類 十脚目 異尾下目(ヤドカリのなかま)]
[カニダマシ類のゾエア]
学名[----]
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
採集データ:採集日不明
解説:下記のカニダマシ類のゾエア幼生。ヘイケガニ類のゾエアに多少似ている。
[カニダマシ類]
学名[----]
出現頻度:☆☆☆(ふつう)
採集データ:平成18年9月の大阪湾産チリメンより
解説:ヤドカリに近縁な異尾類に属する甲殻類。
カニに似るが脚が2本(1対)足りないので、「カニダマシ」。漁業関係者は「バンザイガニ」と呼んでいるようだ。
[ヤドカリ類のゾエア]
学名[----]
採集データ:平成20年7月湯浅有田沖産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:一見、エビ類のゾエアのようだが、文献によるとヤドカリ類のゾエア幼生らしい。
[ヤドカリ類のグラウコトエ幼生]
学名[----]
採集データ:平成18年9月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:腹部に付属肢があり、殻を背負っていないので、グラウコトエ幼生(ヤドカリ類のメガロパ相当の幼生。)とおもわれる。
[トウヨウコシオリエビ]
学名[Galathea orientalis ]
採集データ:平成19年4月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:北海道以南の潮間帯から水深100mまでの海底にすむ、エビに似たヤドカリに近い生き物。
 [軟甲類 十脚目 アナジャコ下目(アナジャコのなかま)]
[ハサミシャコエビ類のゾエア幼生]
学名:[Laomedia astacina (Zoea larva)]
採集データ:平成20年9月のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:ハサミシャコエビはエビに似た体をもつ甲殻類でアナジャコ下目に属し、関東以南の内湾の泥浜に生息する。この仲間のゾエア幼生は一見ボウフラのような細長い体をもっている。
 [トゲエビ類(シャコの仲間)]
[シャコ]
[学名]:[Oratosquilla oratoria ]
出現頻度:☆☆(かなり多い)
採集データ:上から
アンチゾエア幼生
(平成20年7月 有田湯浅沖産)
アリマ幼生
(平成18年9月 大阪湾産)
成体
(平成18年10月 大阪湾産産)

解説:大阪湾産や和歌山産のチリメンにはアリマ幼生や小さな成体はよく混じっている。アンチゾエア幼生も比較的多い。
 [フクロエビ類 等脚目(フナムシの仲間)]
[サッパヤドリムシ]
学名:[Anilocra clupei ]
採集データ:平成20年9月のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:「グソクムシ」と同定していたが、再検討のうえ訂正。サッパヤドリムシは外部寄生して吸血をするウオノエ科の等脚類の一種。
[キンダチヘラムシ]
学名:[Poridotea munda ]
採集データ:平成20年9月のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:キンダチヘラムシは太平洋岸の紀伊半島周辺の岩礁に生息する等脚類の一種。
[ウオノエの仲間?]
学名:[----]
採集データ:平成18年10月大阪湾産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:ワラジムシやダンゴムシはこのグループで、甲殻類のフクロエビ類に属する。
ウオノエは寄生性のグループ。
[ウオノエ科のエガトイド幼生]
学名:[------]
採集データ:(上)平成19年2月有田湯浅沖産より
(下)平成20年7月有田湯浅沖産より
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:以前メナガグソクムシと同定していたが、山口県水試の内田さんの指摘により再検討(ご指摘ありがとうございました。)。等脚類は一般的に幼生期を持たないが寄生性の種は寄生前に遊泳性の幼生をもっている。
 [フクロエビ類 端脚目(ヨコエビの仲間)]
[ヨコエビ類(ホソヨコエビ?)]
学名:[Ericthonius pugnax? ]
採集データ:平成19年4月のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:標本の触角は欠損しているようである。形状からホソヨコエビとおもわれる。ホソヨコエビは本州以南の海藻場に出現する種。
[キタクダオソコエビ?]
学名:[Photis reinhardi ?]
採集データ:平成20年3月和歌山産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:この標本は脚の形状等からキタクダオソコエビと思われる。
文献によると、本種の生息域は本邦沿岸の砂泥質海底となっている。
[ドロノミ]
学名:[Podocerus inconspinus]
採集データ:平成20年11月のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:ヨコエビとワレカラの中間的形態をもつヨコエビの仲間。本州以南の浅海砂泥底に生息。
[ハリナガズキン(ウミノミ)属のウミノミ]
学名:[Rhabdosoma sp.]
採集データ:不明
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:頭が伸張したウミノミの仲間。日本近海で普通みられるこの仲間にはツノアシズキン[R. armatum ]やオナガズキン[R. whitei ]がある。
[ツノウミノミ]
学名:[Phrosina semilunata ]
採集データ:平成20年3月和歌山産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:端脚類プランクトンの中で大部分をしめるウミノミ(クラゲノミ亜目)の比較的大型の種。
文献によると、黒潮流域では普通種で表層でしばしば群れをなすそうである。
[トガリホソメズキン(ウミノミ)]
学名:[Streetsia steenstrupi ]
採集データ:平成20年2月和歌山産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:頭の長いトガリズキンウミノミ類の一種。
[オオトガリズキン(ウミノミ)]
学名:[Oxycephalus clausi ]
採集データ:平成20年2月和歌山産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:頭の長いトガリズキンウミノミ類のうち大型種。
日本近海では対馬海流、黒潮流域に普通に出現する。
[コブテング(ウミノミ)]
学名:[Platyscelus armatus ]
採集データ:平成20年2月和歌山産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:団子状の体をもつテングウミノミ類の一種。
[ノコバウミノミ]
学名:[Brachyscelus crusculum ]
採集データ:(上)平成20年2月和歌山産のチリメンより
(下)平成20年7月有田湯浅沖産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:ノコバウミノミは暖海性の種で、本邦では北緯40°以南の黒潮域に出現する。
[マルエラワレカラ?]
学名:[Caprella penantis ? ]
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
採集データ:平成21年8月大阪湾産(和歌山沖・神戸沖混在)のチリメンより
解説:海藻やクラゲ、クジラ等にしがみついて生活している端脚類の一グループ ワレカラ類の一種。この種は日本近海の内湾から外海まで広く生息している。
[ムカシワレカラ]
学名:[Protomima imitatrix ]
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
採集データ:平成20年3月有田湯浅沖産のチリメンより
解説:海藻やクラゲ、クジラ等にしがみついて生活している端脚類の一グループ ワレカラ類の一種。この種は房総半島以南の砂泥底に生息している。
[フクロエビ類 アミ目]
[アミ類]
学名:[ ---- ]
採集データ:平成20年7月有田湯浅沖産のチリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:先日オキアミ?として紹介したが殻のある追加標本をみるとアミ類と思われるので訂正した。付属肢の破損がひどく属種はわからない。雌は最後部の胸脚が卵保育用のふくろあしになっている。
下はより殻の残った標本。
 [その他のフクロエビ類]
[クーマの仲間]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
採集データ:平成19年2月有田湯浅沖産のチリメンより
解説:クーマ類も等脚類や端脚類同様フクロエビ類に属する。
底生の動物だが、浅海底に住んでいる種では夜間に海表に現れるものもいる。
[クーマの仲間(その2)]
学名:[----]
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常にまれ)
採集データ:不明(平松ユミ子 氏採集の標本)
解説:上記とは別種とおもわれるクーマ類の標本。
[顎脚綱 カイアシ亜綱]
[カイアシ類]
学名:[Copepoda]
出現頻度:☆☆☆(普通)
採集データ:平成19年2月有田湯浅沖産のチリメンより
解説:カイアシ類は、多くが自由生活性(一部は寄生性)の甲殻類の一種で海洋棲プランクトンの主要なメンバーである。
淡水にいるケンミジンコはこの仲間。
 [顎脚綱 蔓脚亜綱 (フジツボの仲間)]
[蔓脚類の蔓脚(まんきゃく、つるあし)の脱皮殻]
学名:[Cirripedia (Cirri)]
採集データ:平成22年2月の和歌山産チリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:蔓脚(まんきゃく あるいは つるあし)はエボシガイやフジツボなどの蔓脚類がもつ、胸脚に相当する付属脚。海中で”手招き”の様に動かして餌をかき集める。
[エボシガイ]
学名:[Lepas anatifera]
採集データ:平成22年4月の和歌山産チリメンより
出現頻度:☆☆☆☆☆(非常に まれ)
解説:エボシガイは浮遊物に群生して付着し、浮漂生活をする甲殻類の一種。
 [顎脚綱 鰓尾亜綱 チョウ目]
[マツイウミチョウ]
学名:[Argulus caecus]
採集データ:平成22年4〜5月の和歌山産チリメンより
出現頻度:☆☆☆☆(やや まれ)
解説:チョウは寄生性の甲殻類の一グループで、日本近海では五種が知られている。顎脚が変形した吸盤で魚に吸い付く。生殖期には宿主から離れて遊泳をすることもある。マツイは模式標本の採集者の名(松井米吉 氏)に由来。

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